名古屋地方裁判所 昭和44年(借チ)12号 決定
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【主文】申立人が相手方に対し六三万円を支払うことを条件として申立人が別紙目録記載の賃借権を名古屋市東区東芳野町二の一二赤羽勝一に譲渡することを許可する。
申立人が前項による賃借権を譲渡したときから賃料を3.3m2当り一ヶ月四二六円に改訂する。
【決定理由】一、申立人は別紙目録記載の土地賃借権を主文第一項掲記の赤羽勝一に譲渡を許可するとの裁判を求めた。
二、本件記録によれば、次のことが認められる。
(1) 相手方は申立人に対し本件土地を昭和二二年六月一〇日賃料は一ヶ月3.3m2当り一〇円、期間は五年の約束で非堅固建物所有の目的で賃貸したこと、なお賃借については申立人は相手方に対して権利金として一、〇〇〇円を支払つたこと、賃料はその後数度改訂され現在は3.3m2当り月一二〇円となつていること。
(2) 右のように賃借期間を五年と定めたのは本件土地が鉄道用地で、何時取上げられるか分らない不安があつたためであるが、当事者双方共に一時使用の賃貸借となす意思はなく、かつ、鉄道用地として取上げられることもなかつたので、期間はその後更新せられ今日に至つたこと。然し元来右の借地期間は借地法に違反し無効のものであるから三〇年間即ち昭和五二年六月一〇まで存続すべきものと認められること。
(3) 申立人は本件地上に別紙目録記載の家屋を所有し、現にそこで印刷業を経営しているが、最近名古屋市守山区の自宅邸内に印刷工場を建設した。そしてその建築資金にあてるため本件家屋を他に売却することとし、赤羽勝一に交渉したところ、同人は本件家屋および賃借権を三〇〇万円で買受けることとなつたので相手方の承諾を求めたがその承諾を得られなかつたこと。
(4) 赤羽勝一は資力もあり、本件賃借権を同人に譲渡しても特に相手方に不利となるべき事情が認められないこと。以上のことが認められる。
相手方は
(1) 本件賃貸借はもともと前記のように一時使用的な目的をもつてはじまつたものであるから申立人はすでに賃貸借の目的を達したものであり、申立人が本件申立をなすのは権利の濫用であると主張する。然し、本件賃貸借の成立事情がどのようなものであつたにせよその後の経過によつて前記認定のように借地法に定める建物所有を目的とする賃貸借と認められるようになつた以上、申立人はすでに賃貸借の目的を達したものといい難いから本件申立をもつて権利濫用となすことができない。
(2) 本件土地は名古屋復興都市計画および大曾根改良都市計画にかかる土地であるから本件申立を許すときはいたずらに関係者を増やし、権利関係を複雑にする結果となるのみであるからこれを許すべきでないと主張する。然し、鑑定委員会の報告書によれば右都市計画は進捗中ではあるが、まだ具体的計画は発表の域に達していないことが認められる。そして、右計画のこのような段階において右事情を考慮して申立人の本件申立を拒否すべきでないと考える。
(3) 相手方は更に本件土地を利用すべき正当の事由があると主張する。そして、相手方本人山村信一の供述(第二回)乙第一号証によれば、相手方の長女山村雅子が近く結婚し、その新居を作る必要上本件土地を必要とする事情が認められないでもないが、そういう事情があれば相手方としては借地法第九条の二第三項による優先買受権を行使するのが本筋であつて、そのことのみをもつて本件申立を拒否すべき理由はない。
以上のとおりであつて、本件申立はこれを許容すべきものと考える。
三、附随処分
前記認定の諸事情および鑑定委員会の意見をしん酌して次のとおり定める。
(1) 金銭給付額、本件土地の借地権価格二五四万二三二〇円の約二五パーセントである六三万円を申立人は相手方に給付すべきものと考える。なお、申立人が相手方に右金員を支払うことを条件として賃借権の譲渡を許可することとする。
鑑定委員会の意見書によれば、賃料月額3.3m2当り八九七四円(新規契約の場合の賃料)とするときは申立人は相手方に対して金銭給付をなす必要はないが、賃料月額3.3m2当り四二六円(継続契約の場合の賃料)とするとき前記借地権価格二五四万二三二〇円の八〇〜七〇パーセントを支払うべきものであり、更に現行賃料3.3m2当り月一二〇円を維持するときは、右一二〇円を基準として収益還元して得た実質底地価格四三万七八三三円と現実の更地価格四六二万二四〇〇円との差額である借地権価格四一八万四五六七円の八〇〜七〇パーセントを支払うべきものであるとしている。然しながら、元来借地権譲渡に際し、地主に交付せられる金銭給付額は借地権譲渡に伴う地主の承諾料を基本とし、これに通常従前の賃料が格安に定められているので賃借権譲渡に際しこれを是正する趣旨等諸般の事情をも加味して算定せられるべきものと考える。当裁判所は右見解に立つて前記のとおり金銭給付額を定めたのであつて鑑定委員会の意見は採用しない。
(2) 賃料、従前の賃料は低額に過ぎるので本件賃借権譲渡後は3.3m2当り一ヶ月四二六円と改訂する。
(3) 相手方は赤羽が本件建物を現状のまま使用する旨特に堅固な建物に改築しないことを附随処分として定めよう求めている。然しながら、増改築禁止特約の認められない本件においては特に赤羽が本件家屋を現状のまま使用することを定める必要はないし、又赤羽が条件変更の申立をなし、その許可を得ない限り堅固な建物を建築することができないのは当然であつて、特にそのことを附随処分で明にする必要はない。(奥村義雄)
目録
(一) 賃借権
名古屋市北区東大曾根町中四丁目五〇五番
一、宅地 五八二、八m2
右宅地の内別紙図面表示の七〇、七四m2
右土地につき昭和二二年六月一〇日賃貸人相手方、賃借人申立人として成立した賃貸借契約にもとずく賃借権。
(二) 建物
名古屋市北区東大曾根町四丁目五〇五番地
家屋番号五〇五番四
一、木造セメント瓦亜鉛メッキ鋼板交葺二階建作業所兼居宅
一階 五三、一九m2
二階 一一、六二m2
以上
<図面略>